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2010年5月28日 (金)

「第十回文学フリマ」で購入した本の紹介

こんにちは。管理人です。
キリンさんは変なデザインだと思います。でも象さんもどうかと思いますよ?
今年もよろしくお願いします。

第十回文学フリマのレポートを4回に渡ってお届けしてきました。

「第十回文学フリマ」ぶらり見学レポート
「第十回文学フリマ」ぶらり見学レポート完結版(前編)
「第十回文学フリマ」ぶらり見学レポート完結版(後編)
【復活!】「第十回文学フリマ」ぶらり見学レポート ←現場でのPR方法にスポット

今回は締めくくりとして、文学フリマで購入した本を紹介します!

『八月科』 著:夏己はづきさん

P5270107_2

札幌市在住のテルミン奏者かつ即興演奏家にしてフリーゲーマー
本ブログでは「おさむらいさん」の愛称でおなじみ夏己はづきさんの短歌集です。

何首か引用しますね。

正しさを信じるものが振り上げる合金製のメートル原器
はらいそ、と君がつぶやく夕暮れにジャングルジムよ密林となれ
なんとなく象の大きささえ忘れかけているから動物園へ
ビニールを剥いて銅線すっと抜くように別れは一瞬だった
ぬけがらを置いてゆきます あなたならそれで十分だと思うので
ゆっくりとかたむきながらあのひとのあたまのなかがほろびていった

きっぱりとした表現が魅力的ですねー。
さすが「おさむらい歌人」です!

「メートル原器」「銅線」といった言葉のチョイスからは「少年性」を強く感じます。
理科と空想小説が好きな男の子のイメージ。

ちなみに、この本については「製本にも力を入れた」とのことです。
印刷から製本まで、すべて自分でこなしたそうですよ。

そのあたりのことを詳しく書いた、

『私は如何にして製本を始めそれで結局何を得たのか、ということ。』

というフリーペーパーもおもしろかったです!

夏己はづきさんのホームページ


『音読』 著:坂本みゆさん

P5270087

「たまとざ」という劇団の脚本・演出家にして、
ブログではテレビ番組のコラムを書いている「リアルおくりびと」こと坂本みゆさんの「朗読用小説」です。

朗読公演で実際に使われた短めの小説が4編はいっています。

硬軟織りまぜた作風なんですが、個人的には「ぱっぱらぱー」な作風のほうが好み。

離婚の危機を克服する様子を「マラソン」を通じてユーモラスに描いた
『スカイブルー・スカイ』が一番好きだなー。

冒頭に掲載されている短歌もいいですね!

君だけに
そっと言おうと思っても
そんな距離にはいなかったのだ

坂本みゆさんのホームページ


『屋上キングダム』 編:屋上キングダム編集部


P5270131

(犬……?)

「屋上」をコンセプトにした、エッセイあり小説あり短歌ありのアンソロジー本。

編集長は稲荷辺長太さん、絵・デザインは後藤グミさん。
他に、あみーさん、志井一さん、辻一郎さん、天国ななおさん、仁尾智さん、
沼尻つた子さん、松陽さん、みなみなみさん、百田きりんさんが参加しています!(ふー)

住んでいる場所も年齢もバラバラな人たちが協力して一冊の作品をつくりあげる、
その行為自体がすばらしいと思いました。

内容も良いです!

特に好きなのは、辻一郎さんの冒頭のエッセイ。
「伝える」ということがテーマなのですが、キラキラとした文章に、ぐっときました!

好きな短歌もいくつか引用しますね。

教室に似ているけれど違うからおじさんたちはなわとびしない (百田きりん)
誰も見ていない青空 大人とはどれだけ大きな人なのだろう (百田きりん)

嬉しくも楽しくもない晴れた日に屋上だから口笛を吹く (みなみなみ)

彼方から反対側の彼方まで飛行機雲が一直線に (あみー)

屋上は上を向いてる 地上から見上げる僕と目を合わせない (あみー)
おのおのの高さでビルが生えていて忍者は屋根を駆け回れない (あみー)
ナントカは高いところが好きだから食物連鎖のてっぺんにいる (あみー)
きみの名を声の限りに 神様は応援団のかたちをしてる (あみー)

特にあみーさんの作品はとてもとてもとても良いと思いました!

屋上キングダムのBlog



『クレイジー・ヤン vol.11』 編:ツルシカズヒコさん

P5270104

(モグラ……?)

『週刊SPA!』の元編集長ツルシカズヒコさんが編集長をつとめる『クレイジー・ヤン』
vol.11は「雑誌は思想である」がテーマ。伊藤野枝をメインに取り上げています。

他にも小説ありコラムあり漫画ありで、「同人誌ってレベルじゃねーぞ」ってクオリティです!
(実際違うのかも?)

どれも読みごたえがあるのですが、短歌ウルフRの管理人としては、
歌人・枡野浩一さんの小説『結婚もっと失格』に注目しないわけにはいきません!

内容はかーなーり切ないです……。
今回が連載第一回目ということなんですが、今後どう展開していくのか気になるなー。

短歌も五首散りばめられていて、作品のイメージを豊かにしているように感じました!
一首だけ引用しますね。

たったいま息子に夢で会いました
夢で会うのも久々だった

泣ける……。

他に「アン・リーの父親三部作」を取り上げた対談コラムもおもしろかった。
『恋人たちの食卓』をひさしぶりに見たくなりました!

クレイジー・ヤン公式ホームページ



『平熱ボタン』 著:伊勢谷小枝子さん

P5270120_2

そして最後は伊勢谷小枝子さんの短歌集『平熱ボタン』なんですが、すみません。
にピントがあって本がボケちゃってますねー。
撮りなおしっと……。

P5270121

モグラまで!
ちょっと邪魔すんなよなー。
ハリネズミくんを見習えっつーんだよ。ぷんすか。

P5270122

お前もかー!

P5270128

どうしてこうなった……。
記念撮影かよ!
モグラなんて前に出すぎて前ボケしてるし……。
あまりふざけていると伊勢谷小枝子さんに吊るされるよ?

P5270117

というわけで伊勢谷小枝子さんの短歌集『平熱ボタン』です!
はっきりいって傑作です!

開きやすいようにリング綴じにした外見がまず目を引きますねー。

中身はとてもシンプル。
白地に黒字で1ページ一首ずつ。

でもそれがまた胸にぐっとくるんですよ!

ところどころに挿入される柴田有理さんの不思議な絵
作品の雰囲気によくあっているなー。

名作だらけの短歌なんですが、特に好きなものをいくつか引用しますね。

鼻水も出るのが納得いかなくてあまり泣かないようにしている
傷口はニヤリとひらく 思い出にするなと全身タイツで止める
ピース! ピース! 私がここにいるせいで私の形に足りない世界
今すぐにゴミと資源に分かれたい もう注入をやめてください
お祈りはやがて短くなっていき世界平和とつぶやいて寝る
彩りをなるべく地味にしておけばやさしく思い出せると思う
なつかしいものしか好きなものがない あなたもはやくなつかしくなれ
さよならは二種類あってもう二度と会えないやつと会わないやつと

好きな作品はこれでもごく一部です!

ドキッとするような鋭い短歌もあれば、くすっと笑える短歌もあり、ぐっとくるあたたかい短歌もある。
その懐の広さこそが伊勢谷小枝子さんの魅力だと思います。

短歌に興味がない人にも伝わる作品だと思うので、ぜひいろいろな人に読んで欲しいですねー。

ちなみに、この本の序文は枡野浩一さんが書いています。
愛情にあふれた素敵な文章なので、ぜひ手に入れて読んでください!

伊勢谷小枝子さんのホームページ


その他 月原真幸さんのポストカード

『八月科』のブースで無料(!)で配布されていた、
月原真幸さんの短歌ポストカードからも気に入った作品を紹介します!

アーモンドクランチチョコをあげるから二度と優しくしないでほしい
優しさでその半分ができている薬みたいなひとになりたい
あまりにもあたたかいので全部嘘だと言われたら信じそうです

孤独感のある切ない作風ですねー。
下手をすると自己愛にべちょべちょにまみれた作品になる危険性が高い作風ともいえるけど、
ギリギリで踏みとどまることできればぐっとくる名作になる。
引用した三首はその成功例だと思います!

特に二首目のような、あまり人から優しくされていない人が、
「自分が優しさを与える側になるんだ」と決意して顔をあげる瞬間を切り取ったような作品は感動的。
それは優しさに満ち足りている人には絶対つくれない「あたたかさ」だと思う。

月原真幸さんのBlog

*

長くなりましたが、以上で文学フリマで購入した本の紹介はおしまいです!

みんなこうして形にするまでのあいだは、いろんな苦労を乗り越えてきたんだろうなー。

それは、商業出版されている本でも同じことなんでしょうが、
作り手の顔が見える分だけ、より強くそんなふうに感じました。

なんかそういうのっていいよなー。

今後もまた、みなさんの、そして他の方々の新作に出会えることをたのしみにしています!

それでは!

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コメント

わお ありがとうございます!
写真も、たくさん、ありがとうございます…
(私の、寄せ書き本にサインをいただくのを忘れた!ので、次回)

投稿: is | 2010年5月28日 (金) 18時35分

ご感想ありがとうございました。
おさむらいさんです。母方の先祖は瀬戸内の水軍系です(たぶんほんとう)

やっぱり読まれる方によって「よい」と思われるものが違うんだなあとおもしろかったです。

投稿: 夏己はづき | 2010年5月28日 (金) 18時55分

はじめまして。月原真幸です。
あたたかいお言葉、どうもありがとうございます。うれしいです!
すごい見透かされてる…(笑)
がんばろうって素直に思いました。
ほんとにどうもありがとうございます!

投稿: 月原真幸 | 2010年5月28日 (金) 21時49分

『屋上キングダム』どうもどうもです。
文学フリマレポートおもしろかったです。
あと、表紙のは「ウミウシ」バッテリーカーのつもりですー。
(わかりづらくてすみません)

投稿: 後藤グミ | 2010年5月28日 (金) 21時58分

isさん
コメントありがとうございます。
作品ほんとうに素晴らしかったです。
吊るしたくなる気持ちもわかるわー。

おさむらいさん
コメントかたじけない。
え? ほんとうにおさむらいさんだったの?

月原真幸さん
はじめましてー。ってお名前は存じ上げていました。
はじめましてでしたっけ?(うろおぼえ)
一方的に知っていただけなのかなー。
ともかく今後ともよろしくお願いします!

後藤グミさん
えーと、こちらこそわかりづらくてすみません。
「犬」はイーゼルの脇で腕組んでいるやつのことです……。
「言語論理的思考」に頼り気味な俺でも「ウミウシ」と「犬」の区別くらいつきますよ! ぷんすか。
しかしいいウミウシだ。

投稿: 短歌ウルフR管理人 | 2010年5月28日 (金) 23時34分

あわわ。
そちらでしたか。
実は過去に「これ、犬?」ときかれたことがあり
条件反射でコメントしてしまいました。
そしてウミウシ褒め、ありがとうございます。

投稿: 後藤グミ | 2010年5月29日 (土) 19時06分

こんにちは、はじめまして!
「屋上キングダム」お買い上げありがとうございます。
そしてその中でも僕をやたらとお褒めくださり、本当にありがとうございます!
喜びと驚きを隠しておくことができず、のこのこと現れました。どうも!

投稿: あみー | 2010年5月29日 (土) 23時32分

>あみーさん

はじめまして!
よくぞのこのことお越しくださいましたね?
あみーさんの短歌を読んでいると、
「この人は自作を客観的に見られる人だ」って感じがします。
題詠blogのほうもたのしみにしていますね。
今後もよろしくお願いします。

投稿: 短歌ウルフR管理人 | 2010年5月30日 (日) 08時16分

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