« 【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (3/4) | トップページ | ただいまー »

2010年6月10日 (木)

【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (4/4)

4337277325_603ef2bb1c
"Original Update by ≫ Zitona ≪"

こんにちは。管理人です。

第1回の「短歌MBA講座」では、これまで3回に渡って
「電子書籍が出版しやすいのは何故か?」というテーマでお届けしてきました。

今回は第1回の講座の最終回です!

「ほんとうは前回で終わりのはずだったのに信用できるか……」

そんな疑心暗鬼の声が聞こえてきそうです……。
 でもだいじょうぶです! 信じてください! お願いします! 誰か助けてください!

まずは、これまでの講義の内容をかるーくおさらいしましょう。

初回は、導入として、電子書籍の概要をごくごく簡単に紹介しました。

【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (1/3)

前々回は、電子書籍がどうして低価格で販売できるのか、そのコスト構造を見ていきました。

【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (2/3)

そして前回は、限界利益と損益分岐点を学習し、利益構造について見ていきました。

【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (3/4)

最終回となる今回は、いよいよ正真正銘掛け値なしに、電子書籍だと出版しやすい理由に迫ります!

それでは開講です!



■利益構造の違いを理解しよう

前回、利益構造の話をしました。

長方形の固定費直角三角形の変動費「合体☆きゃぴーん」した図です。
覚えていますよね?

さて、ここに2つの図があります。
違いがわかりますか?

Cvp_2

そうですね。直角三角形の形が違います
具体的には、左下の角の角度が大きくなっています

では、角度が大きくなるとどうなるのでしょうか?

これは、損益分岐点を見れば一目瞭然です。
角度が高い方が損益分岐点が左にスライドしています

つまり、より低い売上で損益分岐点に達する、ということです!

これが利益構造の違いです。
この場合は下の図のほうが儲かりやすい構造になっているというわけですねー。



■限界利益率の登場(どーん)

ここで、角度が大きいというのはどういう意味か、もう少し詳しく説明します。

もともと直角三角形は限界利益を表していたのでした。
そして、限界利益とは、ひとつ売れるとどれくらい儲かるかを表したものです。

つまり、直角三角形の角度が大きくなるということは、
売るたびに儲かる額=限界利益が増えるということを意味しています

どうですか? だいじょうぶですよね?

念のため具体例を出して説明しまーす。

1000円が定価の本があります。
この本の仕入れ値が900円の時、限界利益は100円です。

売上 - 変動費 = 限界利益
1000円 - 900円 = 100円

図で考えると、1000円ぶん右に進むたびに、100円ぶん上にあがるわけです。

この時、同じ本を800円で仕入れられたとすると、限界利益は200円になります。

1000円 - 800円 = 200円

これが限界利益があがった状態ですね。
同様に図で考えると、1000円ぶん右に進むたびに、200円ぶん上にあがるわけです。

限界利益が高くなると角度が大きくなることがわかりますよね?

そして、この角度のことを限界利益率と呼びます。

Cvp_3

これ重要です!
今晩のおかずにでますよー。

ちなみに限界利益率を式で表すとこうです。

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上

先の例だと、それぞれ 10% と 20% が限界利益率ですね。

限界利益率のこと理解してもらえたでしょうか?



■損益分岐点売上の求め方

さてさて。

限界利益率をわざわざ説明したのは、
これがわかると損益分岐点売上を簡単に求められるからです。

式はこうです。

損益分岐点売上 = 固定費 ÷ 限界利益率

式を見ればわかるように、
分母の限界利益率が高くなれば損益分岐点売上は低くなるわけです。

そうです。
先ほど図で説明したことを、式にしただけですねー。

これを頭の片隅に置いておいてください!



■小説と歌集の利益構造の違いを見てみよう

さあ、いよいよ核心に迫っていきますよー。
まずは、小説と歌集の利益構造の違いについて見ていきましょう!

まず、小説について説明しますね。

前回の講義で説明しましたが、
ハードカバーの本を1000円で販売すると、
初版20,000部が目標販売部数になるそうです。

大雑把に図にするとこんな感じ。

Cvpnovel

仮に、小説も歌集も固定費が同額だとすると、
歌集を同じ1000円で販売しようと思ったら、やはり20,000部売れないと儲かりません。
※現実には違うと思います

でも、ご存知のとおり、歌集はそんなに売れません……。
仮に、この条件で5,000部しか売れなかったらどうなるでしょうか?

Cvptanka

うわあ。悲惨ですね……。

売上が20,000部から5,000部に落ちたので、
損益分岐点には遠く及ばず、大幅な赤字を計上しました! オワタ\(^o^)/

きっとこの歌人は二度とこの出版社から歌集は出せないでしょうし、
担当編集の編集人生も心配です……。

では、どうしたら良かったんでしょうか?

あらかじめ販売部数が予測できるなら、それにあわせた利益構造にすべきです!
たとえば5000部は売れると予測しているなら、こんな図になるはずです。

Cvptanka2

つまり、限界利益率を高めるということですねー。

どうでしたか?
これが、小説と歌集、もとい、売れる本と売れない本の利益構造の違いです。



■限界利益率を高めるたった二つの冴えたやり方

たくさん売れない本の場合、
限界利益率を高めないといけないことはわかりました。

では、限界利益率を高めるにはどうしたらいいんでしょうか?

ここで、限界利益率の式を再掲しまーす。

限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上

ご覧のとおり、いじれる変数は「限界利益」と「売上(=売価)」の2つしかありません。

さらにいうと、限界利益は、

限界利益 = 売上 - 変動費

でした。

つまり、限界利益をあげるには、
変動費を下げるか、売上(=売価)をあげるしか方法がありません!

ふむふむ。

ところで、変動費ってなんだか覚えていますか?
ははーん。その顔は忘れている顔ですね?

そんな忘れん坊将軍のために前回も出したコスト構造の表どーん

Fixed_and_variable_cost_hardcover_2
ふむふむ。
変動費は、印刷・流通著者印税、そして書店手数料で構成されています。

これを安くすませられればいいんですけど、
うーん、現実的に減らせるのは、著者印税印刷(製本含む)費用でしょうか?

製本・印刷費用は、お金の掛からないデザイン・素材にすることで下げることができますよね。

まあでも、変動費を下げるのにも限界があります
材料はゼロ円にはならないですし。

したがって、たいていは、もうひとつの変数である
売上(=売価)をあげることで調整することになるんだと思います。

本の場合だと、本の定価を上げるということですね。

それが、詩歌や専門書などの少部数しか売れない書籍が高額な理由です!



■電子書籍にすることで利益構造はどう変わるのか?

うーん。なかなか、うまくいきませんね。
やっぱマイナー文芸が出版するなんて無茶なのか……。

そんな暗闇に差した一筋の光明こそが電子書籍です!

何故なら、電子書籍だと変動費が大幅に下がるからです。

前回、掲載したコスト構造の表を再掲しまーす。

Fixed_and_variable_cost_hardcover_4

ご覧のとおり、変動費は全ての項目で下がっています

というよりも、紙書籍の26ドルからの13ドルのコスト削減分は、
ほぼ、この変動コストの削減分(12.99ドル)ですねー。

ただし、あわせて売価も下がっているので、
肝心の限界利益率が上がっているかどうかは不明です。

念のため計算してみましょう。

この表をベースに限界利益(売上 - 変動費)
限界利益率(限界利益 ÷ 売上)を計算したのがこちら。

Marginal_cost_hardcover_ebook

注目して欲しいのが限界利益率です。
23%→45%に、ほぼ倍増していますね!

これによって利益構造がどう変化するのでしょうか?

もう一度、大赤字を出した時の利益構造を再掲します。

図、どーん。

Cvptanka_2

そして、電子書籍化で限界利益率を改善した利益構造がこちら。

図ずーん。

Cvptanka_new

限界利益率が向上したことで、損益分岐点が左にスライドしているのがわかります。
結果、売価を変えずに損益分岐点売上を達成することができましたー

ぱちぱちぱち。

もちろん、これは厳密なシミュレーションじゃないことには注意してくださいね?
あくまでも考えかたとしてはこうなりますってことです!

そう。これが電子書籍にすると出版しやすくなる理由なのです!



■すばらしい世界

この結果、得られるメリットは、出版しやすくなることだけではありません

むしろ、価格を下げたことで、
本当に必要な人に行き渡りやすくなることが最大のメリットじゃないでしょうか。

本当は、その本を必要としているけど金銭的に手が届かない人
たとえば中高生なんかも買いやすくなるかもしれません。

そうすると、結果として、読者層が広がり販売部数自体が増える可能性もあります。

今のは価格を安くして出版するというシナリオでしたが、
逆に、価格はある程度据え置くというシナリオも考えられます。

この場合には、よりコストをかけられるようになるので、
製本や装丁に趣向を凝らしたり著者印税を手厚くすることもできるはずです。

うーん。

オラ、わくわくしてきたぞ!

ふはは。まるで夢のようだ。(声:ムスカ)



■現状と今後の課題

そう。夢のようです

というのもこれはまだ実現していない未来の話だからです。

これまで、電子書籍と紙書籍が同じ値段であれば
同じだけ売れることを暗黙の前提にしてきましたが、
電子書籍市場と紙書籍市場では、市場規模のケタが違うため、
同じだけ売れるというのは、非現実的な想定です。

ちなみに、2008年度の電子書籍市場規模は464億円(株式会社インプレスR&Dの調査)であり、
2009年の紙書籍市場8492億円(出版科学研究所の調査)と比べると、5%程度の市場規模に過ぎません。

両方の市場規模は年々かなりのペースで縮まってきているようですが、
同等の市場規模になるのは、まだ先の話になりそうです。

ずるーん。

すばらしい世界はまだ先か。

iPad。頼むよ。




■まとめ

では、今回の講義のまとめです!

1. 小説と歌集では利益構造が異なる
2. 限界利益率がわかると損益分岐点売上を求めることができる
3. あまり売れない本を出版するためには限界利益率を高める必要がある
4. 限界利益率をあげるには、変動費を下げるか、売上(=売価)をあげる
5. 変動費を下げるのには限界があるので、売上(=売価)をあげるのがふつう
6. 電子書籍になると、変動費が下がり、限界利益率をあげることができる
7. その結果、電子書籍だと、より低価格で出版することが可能になる
8. 現在のところ電子書籍市場はとても小さいので、紙書籍市場と同等の売上は望めない
9. 電子書籍市場を拡大する起爆剤としてのiPadに期待が集まる

以上で第1回の講義は終了です!
はー。長かった……。



そうそう。最後に少しだけ補足でーす。

気の抜けるような結末だったかもしれませんが、
アマチュア作家にとっては、現在でも電子書籍での出版にはメリットがあります。

食えるほど売るのは難しいですが、小銭くらいなら稼げるかもしれません。
少なくとも、自費出版よりはずっと可能性が高いと思いますよー。

そして、一部のプロにとっても、魅力があるチャレンジだと思っています!

電子書籍については、今後も継続的にフォローしていくつもりです。
おたのしみに。

それではまた!

人気ブログランキングへ←管理人の「やる気スイッチ」ですよ?

|

« 【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (3/4) | トップページ | ただいまー »

短歌のことを考えました」カテゴリの記事

コメント

MBA講座、見事にコメントつきませんね。
一応全部読みましたが、
文理系卒の私の頭の理解は
こんな感じです↓
あってます?

本を出すっていうのは
損失が大きく出る場合もあり
非常に博打なものであるけど
電子書籍だとコストが少ないから
多少安全な博打になる、と。

もしくは長瀬大さんは
短歌に邁進する文系な男子と思ってたのが
あれ?ほんとは経済学部出身?
みたいなとこが見えて
意外性に惚れてまうやろー!

投稿: 檀可南子 | 2010年6月11日 (金) 00時12分

檀可南子さん

えーと。ぜんぶ間違っています!(どーん)

>MBA講座、見事にコメントつきませんね。

まずこれが違います。
コメントはつかないんですけど、
ふぁぼられたりはしているから、そこそこ反響はあるんです!
たぶん……。

>電子書籍だとコストが少ないから
>多少安全な博打になる、と。

リスクとリターンの関係でいうと、
限界利益率(角度)が高いほどハイリスク・ハイリターンです。

だってほら。
仮に予測が外れてちょっとでも売上が足りないと
がくーんと利益が下がっちゃうでしょ?

でも、ことはそれほど単純でもなく、
損益分岐点が左にスライドした分だけ、
赤字になる能性は低くなっているので、
その観点では、ローリスクになったといえないこともないです。

ま、ケース・バイ・ケースですね。

ただ、セルフパブリッシング(出版社通さず自己出版)の場合は、
ローリスクといって間違いないと思います。
固定費がほとんどかからないので、売れれば売れるだけ利益が出るから。

>短歌に邁進する文系な男子と思ってたのが

も、この辺はぜんぜん間違っていますね!
短歌に邁進していないし、もう男子じゃないし、おじいちゃんだし。
文系はあたっているか。

>あれ?ほんとは経済学部出身?

違いますし、経済学部って文系では……?

>意外性に惚れてまうやろー!

そこは否定しません。 ←おい

投稿: 短歌ウルフR管理人 | 2010年6月11日 (金) 00時33分


そうなんですか~。
なんかコメントしづらい記事かと思って。
私の頭では理解が厳しかったので
皆さんもそうなのかと…。

自費出版だとローリスク!
それは乏しい脳みそでもわかりました。
もし将来そんな機会がくれば
参考にします。


え?文系じゃないの?
そもそも経済学部は文系なの?
新発見です。
心理学科卒の私にとったら
経済も理解できないという部分で理系に近い。
あと長瀬大さんは20代半ばと思ってた(笑)

でも、人のコメント欄でいっぱい間違ってしまった。
めんご。

で、でもそれを指摘できる人って
き、嫌いじゃないんだからねっ!!

投稿: 檀可南子 | 2010年6月11日 (金) 07時53分

分かりやすくて大変面白かったです。

投稿: いなちょう | 2010年11月28日 (日) 21時05分

いなちょうさん

面白がってもらってなによりです!

投稿: 管理人 | 2010年12月 1日 (水) 06時40分

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (4/4):

« 【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (3/4) | トップページ | ただいまー »