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2010年6月 8日 (火)

【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (2/3)

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"Original Update by ≫ Zitona ≪"

こんにちは。管理人です。

前回からはじまった新コーナー「短歌MBA講座」
第1回の講義は「電子書籍」を題材にとり、全3回にわけてお届けしています。

前回は、導入として、電子書籍の概要について、ごくごく簡単に説明しました。

【短歌MBA講座】第1回 電子書籍が出版しやすいのは何故か?<損益分岐点と限界利益> (1/3)

今回は、いよいよ本筋にはいっていきますよー。

それでは開講です!

■販売価格はどうやって決まるのか?

前回、電子書籍は紙書籍より低価格で販売できるという話をしました。
そもそも、本の価格はどうやって決まっているのでしょうか?

管理人は出版業界の関係者でもなんでもないので、
ざーっとネットで調べたんですが、
んー、これという情報が出てこないんですよねー。

なので、一般論で説明しますが、通常、価格は利益を最大化するように決定します

これ重要ですよ! 『ワンピース』なら「どーん」って出るところです!

利益というのは売上からコストを引いた残りのことです。

利益 = 売上 - コスト

コストについては後述するとして、売上を数式にするとこうなります。

売上 = 一冊あたりの販売価格 × 売上数量

日本の場合は再販価格維持制度がある ので、

売上 = 定価 × 売上数量

と考えても良いですね。

常識的に理解できることだと思いますが、
普通、定価と売上数量はトレードオフの関係にあります

定価が高くなれば売上数量は減るし、定価が安くなれば売上数量は増えるってことです。

なので、そのバランスを取って、売上が最大になるように定価を決めるわけです。

■書籍の場合はどうかな?

書籍も基本的にはこのロジックで定価を決めているはずですが、
小説なんかは単行本にしろ文庫本にしろ定価はほとんんど同じですよね。

これはつまり、需給を価格で調整していないというわけで、
人気の本はどんどん売上があがるけど、不人気の本はぜんぜん売上があがらない構造ってことです!

そしてその中でも、ほとんど売れないような本、
つまり、利益が出ない本は出版することさえできません

利益が出ないというのは、コストが回収できないと言い換えることもできます。

では書籍のコストってどうなっているんでしょうか?

■書籍のコスト構造

アメリカの例ですが、平均的なハードカバーのコスト構造が次の表です。
Cost_hardcover_2  

この表を見るときに注意しないといけない点が2つあります

1つめは、あくまでも平均的なコスト構造だという点です。
ベストセラーになるような本では、また違うコスト構造になるはずです。

2つめは、アメリカの例だという点です。
日本の出版システムは、アメリカとは少し違うようなので、単純に同じと考えることはできません。
だいたい、ハードカバーの価格が26ドルってびっくりするくらい高いですもんね?

まあでも、同じ出版ビジネスなので、参考にできるくらいには似ていると思います。
(詳しい方がいたらコメントに補足していただけると助かります!)

■電子書籍のコスト構造

そこで気になるのが電子書籍のコスト構造ですよね?
先ほどの紙書籍と比較した表がこちらです!
Cost_hardcover_ebook_2

まず、目につくのが、出版社の利益はほとんど変わらないのに、販売価格が半額になっていることです!
普通、販売価格が下がれば売れる数は増えるので、
このコスト構造なら、電子書籍のほうが出版社にとってメリットがあるといえそうですね。

次に、「印刷・流通」のコストが電子書籍はタダになっていることです。

でも、ここで意外なのは、タダになったとは言え、
13ドルの値下がりにはそれほど大きく寄与していないということですねー。

それもそのはずで、「印刷・流通」は元々3.25ドルしかかかっていません。

じゃあ何が大きく寄与しているかというと、「書店手数料」です。
これが9ドル以上下がっています

電子書籍で「書店手数料」というのも奇妙ですが、
これは、AmazonやiTunes Book Storeに支払う手数料のことですね。

あとは、金額ベースで見るとほとんど同じです。

割合で見ると、「著者印税率」が15%から25%にあがっているのが目立ちますねー。

ただし、書籍の販売価格も下がっているので、
一冊あたりの印税金額はちょっと低くなっています

したがって、このコスト構造の場合、紙書籍より多く売れないと、著者へのメリットはありません

しかし、販売価格が下がった分、売れる数が増える(とふつうは考えられる)ので、
著者にとっても、電子書籍によって、印税額が増える可能性は充分にありそうですね。

あ、繰り返しになりますが、このコスト構造は平均的なハードカバーのコスト構造です。
簡単にいえば、平均的に売れる本ってことですね。

■あまり売れない本はどうなるのか?

というと、当然「平均的に売れない本」の場合が気になりますよね?

というより「歌集なんてハードカバーの平均ほど売れるわけねーだろ!」って感じですよね。

ごもっともです!

結論からいうと、あまり売れない本を採算に乗せるには2つしか方法がありません

1つめは、販売価格を高くして、少ない販売部数でもコストを回収できるようにすることです。
一部の歌集や専門書がめちゃくちゃ高額なのは、このアプローチを取っているからですね。

2つめは、コストを下げて、低い売上金額でも利益をあげられるようにすることです。
電子書籍で期待されているのは、この2つめのアプローチにおいてです!

実際に、先の表では、コストは半分近く下がっていましたよね。
このことが歌集などの少数部数しか売れない書籍にどう影響するのでしょうか?

それについては、次回解説します!

■補足:電子書籍はもっと安くならないのか?

まとめに入る前に、ちょっと寄り道して電子書籍の話を補足。

みなさん、電子書籍のコスト構造を見たときに、
「あれ? 安くなるっていってもこんなもんなんだ……」と思いませんでしたか?

なんだったら限りなく0円になりそうなイメージがありますもんね。

もっと安くするためにはコストを下げる必要がありますが、その余地はあるでしょうか?
先ほどの表を再掲します。
Cost_hardcover_ebook_3

うーん……。
下げるところありますか?

ふつう電子書籍のメリットにあげられる「印刷・流通」はとっくに0円です。

そう考えると、これ以上どこが下げられるんでしょうか。

実際、電子書籍はそれほど安くならない、と考える人もいます。
このコスト構造を見る限り、納得感がありますよね。

でも、このコスト構造はあくまでも従来の出版社を介した出版システムが前提になっています。

たとえば、出版社を介さないセルフパブリッシングであれば、もっと安くできます
これからはそういう動きもどんどん出てくるでしょうね。

つまり、電子書籍はもっと安くなる可能性が充分にあるということです!

■今回の講義のまとめ

では、今回の講義のまとめです。

1. 販売価格は利益を最大化するように決まる
2. ただし、書籍の場合、相場価格が定価として決まっている
3. つまり、出版ビジネスは、少数の人気作品が稼いで足手まといは切り捨てるモデルといえる
4. したがって、利益が出そうもない本はそもそも出版できない
5. 電子書籍では紙書籍よりコストが下がるが、その大半は書店手数料が下がるため

6. 印刷・流通コストが不要になることのコスト面でのメリットは意外と少ない
7. コストが下がることで、これまで採算があわなかった歌集なども出版できる可能性が出てくる
8. 出版システムが変われば電子書籍はもっと安くなる

今回はかなりボリュームがあったし、若干わかりにくかったかも。

次回は、「コストが下がると出版しやすくなる理由」を解説します!
第1回の講義は次回が最終回(だと思っていた時期が俺にもありました)なのでお見逃しなく。

それではまた!

※次回の講義は こちら からどうぞー。

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