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2012年3月26日 (月)

「うたらば総集編Ⅰ」掲載作品の感想

前回の記事で予告したとおり「うたらば総集編Ⅰ」の
掲載作品のなかで気に入った作品を紹介します。


*


春に恋するのが一番良いでしょう風が強いと尚良いでしょう (伊藤夏人)

恋するタイミングに関する極論の謎の説得力。

「春に恋」はまあ確かにって感じですけど、
「風が強いと尚良い」理由はよくよく考えると謎すぎる。

この謎の説得力を生み出しているのは気象予報士のような語り口なんだろうか。

恋に前向きになれそうなさわやかな作品ですね。


まって、って言葉も届かないくらいあなたとあたしのあいだにさくら (こゆり)

情景が目に浮かぶドラマティックな名作。
まあでもこれ相当なさくらですよ。

しかし解説不要な名作すぎて解説することないな。


好きな人はいないと首ふる十歳の髪にふれればうまれる光 (イマイ)

本当は好きな子がいるんでしょ? んー?(にやにや)

そんな「うざ絡み」をしたくなる作品。
きれいな作品ですね。そしてかなりのキューティクルです。


走ってる 尖った空気吸い込めば わたしの肺がこのへんにある (とびやま)

連作「肺呼吸」より一首。

なんとなく冬のマラソン大会を思い出しました。
「肺がこのへんにある」という独特の身体感覚表現もおもしろいなあ。

言われてみれば納得できるけど、
そういうふうには普通なかなか考えないですもんね。

ぜひ連作全体を読んでもらいたいです。


終わりなど告げずに沈む曇天の太陽みたいなやさしさだった (野比益多)

作品自体の完成度が高いし、着眼点もおもしろいです。
確かに「曇天の太陽」ってやさしいかも。

逆に、真夏の晴天の夕陽って
満面のどや顔で手をぶんぶん振りながら沈んでいく印象があります。

しかし野比さんは陰日向に咲くものにやさしさを見出しがち歌人ですね・・・・・・。
そんな野比さんが自身がやさしい人(orそうありたい人)なのでしょう。



どこまでもあなたの影はまっすぐで そういうところが大好きだった (龍翔)

ふつう影ってまっすぐですやん・・・・・・?
少なくとも個人差ってないですやん・・・・・・?
という常識的な突っ込みを寄せ付けない説得力。

まあ影を暗喩として自然に受け取れるからかも。

龍翔さんは印象的なフレーズをつくるのがうまい、というか活かし方がうまいですね。



魚には魚の呼吸 くちびるを強く結んで行く春のなか
 (むしたけ)

連作「はるのさかな」より一首。

なんかこの「世界に違和感を覚えながらも強くあろうとする感じ」がぐっとくるんだよな・・・・・・。

重苦しくてうざくなりがちなテーマだと思うんですけど、
「春のなか」というさわやかなフレーズがバランスを取っている印象。

こちらも連作自体がすばらしいので、
ぜひぜんぶを読んで欲しいですね。



バスの窓駆け上がる雪 ねえ、あのさ サビしか知らないあれ歌ってよ (とびやま)

あいまいか。

無茶振りをされた相手の困り顔が目に浮かびます・・・・・・。

逆にいうとそんな無茶振りをするくらい退屈な空気感と
無茶振りできるくらいの親密さも伝わってくる。

それはそうと雨粒だけではなく雪もバスの窓を駆け上がるんですね。



春を待つ方法としてわたしなら真っ白になる覚悟はあるよ (ミボツダマ)

まっすぐな姿勢がすがすがしいです。

作品としても、ひねりがあって、
だけれど、一読するとそんなことを感じさせないシンプルなつくりになっていてすばらしい。

ミボツダマさんには「真っ白になる覚悟」だけでなく、
「真っ黒になる覚悟(=目的のためには誰かを傷つける覚悟)」を織り交ぜていただき
ぜひとも春をゲットして欲しいものです。



雪だるまさん そばにいて欲しいけど同じ世界じゃ溶けてしまうの (ショージサキ)

かわいいなおい!

歌っている内容はまあよくある感じだし、
「お前が厚着して外出ろや」という冷静な突っ込みもできなくないですけど、
このキュートな歌いっぷりの前では無意味。

ご本人的には過去の赤面短歌らしいけど、
個人的には今回紹介した作品のなかでも1、2を争うくらい好きな作品です。


*


いかがでしたでしょうか?
気に入った方はぜひ「うたらば総集編Ⅰ」をゲットしてみてください。

ではまた。



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