【短考】歌会が苦手な人のための歌会を考えた(完結編:実際にやってみた2012春)
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前編、Part2そして前回のSeason3につづいてテーマは歌会。
最終回の今回は「実際にやってみた」ということで5月に開催した歌会の内容をレポートします!
■今回の歌会の仕組みと狙い
まずは今回の歌会の仕組みと狙いをかんたんに紹介します。
基本的な方針は前回の記事に書いたとおりなのですが、
準備時間がないなどの制約で全部を盛り込めたわけではなかったり、
参加者の意見を聞いて軌道修正したこともいくつかありました。
まずは全体の流れを。
- 自由詠で1首を事前準備する
- シャッフルして作者を伏せた状態で全員が全作品の採点
- 結果&作者発表
- 結果を見ながら講評(講評は「いい短歌にするには?」など基本軸に沿って)
- みんなでよってたかって改作する
- ふり返り(実際は後日オフラインで実施)
流れは普通の歌会とあまり変わりません。
やや変わっているのが講評の前に作者名を明かすところと、
5の「改作プロセス」、6の「ふり返り」くらいですかね。
続いて個々の要素の詳細とその狙いを説明していきます。
「作者発表のタイミング」
流れのところでも説明したとおり作者発表のタイミングは
「投票後かつ講評前」にしました。
「講評前に作者がわかると見方にバイアスがかかりそう」という意見もありましたが、
- 自作の講評中に作者本人が白々しい発言を強いられる
- 講評中に作者本人に狙いが聞ける
といった点を重視しました。
「自由詠vs.題詠、即詠vs.事前準備」
結局、自由詠、事前準備としたのですが、
これは準備不足という面が大きいです。
今回大きなチャレンジとして実施した「改作プロセス」のことを考えると
本来は即詠のほうがいいし、即詠なら題詠のほうがやりやすいと思っています。
「出詠数」
今回は1首としました。
複数出すことでいろいろ感想をもらえるというメリットより、
とことん講評しあえるメリットを重視しました。
端的に時間の制約の問題です。
「参加者数」
参加者は5名です。
ある程度時間を取って講評しようと思ったら、
これくらいの人数が限界ではないか、というのが理由です。
人数以外にも「誰を呼ぶか」というのも重要だと思います。
歌会の目的とか方針にあわない人を呼ぶと誰もハッピーになれないですからね。
「投票方式」
今回の歌会の特徴のひとつがこの投票方式で、
こういう方式で行いました。
- 全員が全作品を評価する
- 5段階の主観&絶対評価
- 同じ段階の作品の差もある程度定量的に把握するために0-100点の採点
まず1つめについては、個人的に常々不満を感じている、
「票が入らない作品についての情報がなにもない」ことへの対応ですね。
これに関しては大した手間でもないんだからやらない手はないと思っています。
2つめはこれも歌会で不満を感じる
「いい作品がひとつもなくても票を入れないといけない」とか
「同じ票数だと実際に差があるのかないのかわからない」といった問題の解決策です。
ちなみに今回は
- すごい好き
- 好き
- ふつう
- 駄目
- まるで駄目
という5つの評価基準を用意しました。
全員が全作品についてこの基準に沿って主観&絶対評価をつけていくわけです。
ちなみにこういう区分けにしたのは、
「結局いちばん大事な評価って好きか嫌いかでしょ?」
という考えがベースにあるからですね。
3つめはちょっとした味付けというか
情報量を増やす取り組みとして採用してみました。
ただし100段階の採点ルールを明確に規定することはむずかしいので、
あくまでも各自の裁量に任せました。
そんなわけで得点は参考情報以上の意味は持ちません。
とはいえある程度のルールを決めないと完全に無意味な情報になってしまうので、
- 0~20点:まるで駄目
- 21-40点:駄目
- 41~60点:ふつう
- 61~80点:好き
- 81~100点:すごい好き
というかたちで前述の5段階評価と対応させるようにしました。
「講評」
これは細かく規則を決めるよりは、
「心得」みたいなゆるい感じで議論の方向性の統一を目指しました。
- 「いい作品にするにはどうすればいいか」という観点でコメントすること
- 「趣味」の問題と「作品の質」を区別してコメントすること
- 「ポテンシャル」と「完成度」を区別してコメントすること
とりあえず今回は上の3原則をたたき台として採用しました。
原則として適切かというと全然そんなことはないのですが、
まあ1回目なのであとでふり返りを実施してブラッシュアップしようと。
ベースラインがないと改善もないですからね。
今回の歌会では「いい短歌をつくるために役立てる」ことを目的としているので、
歌会でよくある「みんなが自分ルールに従って好き勝手にしゃべる」状況は回避したい。
ある程度それを実現できることが重要だったわけです。
「講評時間」
基本的には全作品に均等に時間を割り当てました。
よくある歌会で個人的に感じる疑問は、
良い作品に多く時間があてられているが、
それは不公平というだけでなく意味が薄いのでは?
良い作品(≒完成度の高い作品)は講評する余地があまりないはずで、
それよりは悪い作品に多くの時間を当てたほうが実りが多い。
というものです。
ただし、実際にはあまり語ることのない作品もあるはずなので、
上限は均等に割り当てるが、途中で打ち切りもあり、という感じにして、
最終的に時間があまったら、
語り足りない作品の講評を続行してもいいですね、という形にしました。
ちなみに講評時間は10分です。
これは歌会経験者にヒアリングして
「言いたいことがある程度ちゃんと言える時間」を設定しています。
主だった要素についての実施内容と狙いはそんな感じですね。
■実際にやってみた感想
で、「実際にやってみどうだったの?」という話ですが、
全体的には「なかなか良かった」というのが個人的評価です!
まあ自分で企画したから当然といえば当然かもしれませんが・・・・・・。
ただ、他の参加者も概ねそのような感想だったので、
初回の取り組みとしてはまあ成功だったのではないかと!
細かい感想はこの記事の末尾の「おまけ」をご参照ください。
ふり返りの内容をまとめています。
■まとめ
ではシリーズ最終回ということでもあるし、
全体的な感想を含めてまとめておきます。
- 歌会の目的を明確にしよう!(目的自体はなんでもいい)
- 目的を実現するためにゼロベースで歌会の内容を設計しよう!
- 歌会の目的や設計内容に賛同できる人たちで歌会を実施しよう!
- 初回は準備がだいじ!
- ちゃんとふり返りを実施しよう!
- なるべく継続しよう!(続ければ続けるほど良くなっていくのは空き地歌会が証明していますよね)
そんな感じでしょうか。
このシリーズがみなさんの素敵な歌会ライフの一助になれば嬉しいです。
ちなみに最後にぶっちゃけると僕個人はやっぱり歌会あまり好きじゃないです!(おい)
■おまけ
最後におまけということで、実際に行った歌会の実施レポートをご紹介します!
(参加者の許可を取っていないので一部情報は改変しています)
「tankabu_2012-05-05_v2_for_blog.pdf」をダウンロード
ではまた!
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