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2012年12月12日 (水)

【短考】感想と批評の違いとはなんだろう?

みなさんお元気ですか? 外は天気です。
そして僕の元気のことは聞かないでください・・・・・・。(どうした)

前回の記事「いい短歌とは」ということについて私見をまとめました。で、その時から次の記事で書くテーマは決めていました。

それが今回のテーマである「感想と批評」です。


■感想と批評について語る時にぼくたちが語ること

「それは批評じゃなくて単なる感想だよね」
「批評じゃなくて批判じゃん。というか悪口じゃん」

歌会とかTwitterのつぶやきでよく聞く台詞ですよね。
聞き覚えのある人も多いはず。

でもこれって一体どういう意味なんでしょう?

他にも、

  1. 批評と感想はなにが違うの?
  2. 「ただの感想」ではない「ちゃんとした批評」を書くためには何が必要なの?
  3. そもそも単なる感想では駄目なの?
  4. 感想より批評のほうが偉いの?
  5. 批評ってなんの役にたつの?

このような疑問を抱えている人は多いはず。
今回の記事ではそのあたりを整理してみます!


■感想と批評って結局なにが違うの?

まずは感想と批評についての一般的な定義と成立要件をまとめてみました。複数の辞書を参考にして妥当な定義にしたつもりです。

もちろん、より詳細な成立要件を追加する人もいるでしょうけど、まあこんな感じの認識でとりあえずはいいのではないかと。

Kansou_hihyou

ここで大事なことは2つあると思います。

1つめは「感想は自由に書いていい」ということ。
2つめは「批評には理由が必要なこと(理由がなければ批評とは言えない)」ということです。

そのことをもう少し詳しく「評価種別」と「評価基準」と「評価理由の説明責任」という3つの比較項目で整理し、感想と批評を比較してみたのが次の図です。

似たような概念である「批判」「悪口」もあわせて整理してみました。


Kansou_hihyou_matrix


「評価種別」を見ると、「感想」と「批評」が「肯定評価」と「否定評価」どちらも取り扱うのに対して、「批判」と「悪口」は「否定評価」だけを取り扱っていることがわかります。

また「評価基準」と「評価理由の説明責任」という2つの比較項目で見ると、「感想と悪口」そして「批評と批判」の2つにグルーピングできることもわかります。

その点を加味して感想と批評の主な違いをシンプルにまとめなおした図どーん。


Kansou_hihyou_matrix_simple


このようにまとめてしまえば違いは一目瞭然ですよね。
つまり、

「感想ではなく批評を書くにはどうすればいいか?」

という疑問に対する答えは、

「評価だけでなく何故その評価になったのかの理由を客観的に説明すればいい」


ということになるわけです。

# 念のため補足しますが、「評価基準」の「主観的/客観的」というのは程度問題です!
# 完全な客観なんてあり得ないので実際には「やや主観的」「やや客観的」くらいの意味です。


■「批評」には種類があるの?

それではいよいよここから「感想と批評の意義」についての考察に入っていきますよー。

と、その前に確認しておくべきことがあります。それは一口に「批評」といってもいろいろな種類がある、ということです!

Twitterや歌会で批評について議論されるときも、そのあたりはきちんと区別されていないのではないでしょうか?(そしてそのことが議論がかみ合わない原因だったりするのかも)

ということで批評についての詳細なまとめマトリクスどーん。


Hihyou_matrix


いかがでしょうか?
「いかがでしょうかじゃねえよ説明しろよ」って感じでしょうか?

まず釈明しておかないといけないのは見出し行の各「××批評」は基本的には僕の造語ということです。

急造でキャッチアップした知識で無謀な体系化を試みているので正直クオリティは低いと思うんですけど、全体像を見取り図として示すことが最重要だと考えているのと、徐々にブラッシュアップしていけばいいと考えているので恥ずかしげもなく提示しました。

個人的には、批評について語るときには、少なくともこのレベルに細分化して理解をあわせる必要があると思っています!

最後にこの表から読み取るべき大事なポイントを以下にまとめておきますね。
  1. 批評にはこのように色々な種類があり目的や評価軸などがそれぞれ異なる
  2. 批評の場においてはこのうちの複数の批評手法を同時に利用することがある
  3. 評価基準が明確であるほど、そして検証可能性が高いほど批評の説得力は増す
  4. どの批評が優れているということは特にない(目的による)
  5. 逆にいえば目的にかなっていない批評は価値が小さいと言うことはできる
  6. 批評は作品についてよりも評者の考えについて語っている側面もある(*)
* それについてはこちらの過去記事「ウィトゲンシュタインの物差し」もご参照ください


■それで感想と批評の意義ってなんなの?


ここまでの説明で感想と批評の違いはいろいろわかりました。残る疑問は「で、それなんの役にたつの?」ってことですよね。

ということでここでは感想と批評の意義/提供価値について考えてみます!

ところで「提供価値」というくらいなので「提供するもの(何を)」だけでなく、「提供する相手(誰に)」も必要ですよね。

そこで、「(感想/批評の)読者」「作者」「評者自身」という3つの立場でそれぞれどのような価値を提供することができるのかを以下の図にまとめました。


Kansou_hihyou_value


もちろん他にも提供価値はたくさんあると思いますが、基本的にはこんな感じではないでしょうか。

そしてこうして整理すると、(多くの)歌会において感想ではなく批評が求められる理由も見えてきますね!

その他重要なポイントを以下に補足しておきます。
  1. 感想と批評で提供する価値はそれぞれ違う
  2. また提供される価値は受け手の立場によっても異なる
  3. 何をどれくらい重視するのかも人や時と場合によって変わる
  4. 感想がいいのかどんな批評がいいのかは目的や状況で変わる
結局は前回の記事と同様に当たり前の話に落ち着くわけですが、「批評より感想が偉い」ということもなければその逆ということもないわけですね。

ただし適切な感想や批評というものはある

大事なのは目的を意識して、場や状況に応じて適切な感想や批評をするということだと思います。


■最後に

目的を明確にしてそれに適した行動を取る。先ほどの繰り返しになりますがこれは「ちょう重要な基本姿勢」です!

適した行動は目的が変わっても変わるし、場や状況が変わっても変わります。(たとえば歌会にしてもその目的が作歌力の向上か親睦かで求められるものは変わるはずです)

大事なのは、教条主義に陥って思考停止せずに、目的に応じた適切な感想/批評を選択して実践することです。

そして、それを実践するためには、「どういう目的にどういう感想/批評方法が適しているか」を理解しておく必要がある。

この記事に掲載したチャートが、その際の「ガイドマップ」としてお役にたてば嬉しいです。

尚、批評については今回語り切れなかったことがたくさんあります。いずれそれらについても記事に書くつもりなので気長にお待ちくださいね。


ではでは。


P.S. ちなみにこのブログで短歌を紹介するときのスタンスは基本的に「感想」です!



<参考文献>

批評に関してはまったくの無知だったので、短歌の時評サイトを含めてWeb上でいろいろ参考にしましたが、こちらのサイトの記事がいちばん腑に落ちました。

文学を読む③文学研究と批評・評論

石堂藍さんのHPの記事です。シリーズものなので興味があるかたは関連記事を一通り読んでみてください。

特に批評の分類に関しての考えかたは大きな影響を受けています!





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コメント

謹言

必 要 が あ る か な い か と ア ル マ ジ ロ 相 手 に 聞 い て み た く も な る が

投稿: ino | 2015年5月25日 (月) 23時08分

わかりやすい

投稿: んすえt | 2015年6月18日 (木) 17時22分

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