【短考】短歌人口を推計してみました
こんにちは。
何ウィルスですか? 僕はノロウィルスです。
今回のテーマは「短歌人口」です。
ここでいう「短歌人口」とは「短歌の創作人口」のことで、「直近1年間に一回でも短歌の創作活動に関わった人の総計」と定義します。
そのものずばりの資料がなさそうなので、いろいろな方法で推計してみました。
結論としては、
ちょう概算で「6万人~50万人」
概算で「20万人~40万人」
思いきって言い切るならば「25万人」前後
という推計結果になりました。
次項から推計方法と推計結果の詳細を説明していきます。
■推計のアプローチ
今回、推計のアプローチとしては、
(1)「生活基本調査」のデータから推計
(2)人口から推計
の2つを採用しました。
■生活基本調査のデータから推計
まず「生活基本調査」のデータからの推計。
「平成23年生活基本調査」によると、俳句や小説や詩などを含む文芸創作人口は253万人なので、これが短歌人口の上限になります。
文芸創作人口における短歌のシェアをざっくり20%と仮定する約50.6万人。
このシェアの仮定に特に根拠はありませんが、「何かしら物を書いています」という人たちの中で、短歌を書いている人が5人に1人より多いとは想定しづらいのでこれを上限としています。
実際にはさらに少ない可能性が高く、「10人に1人」(シェア10%)だと25.3万人、
「20人に1人」(シェア5%)だと12.6万人、「40人に1人」(シェア2.5%)だと6.3万人が短歌人口となります。
さすがにこの程度のシェアはありそうなので、6万人がおおよその下限と言えそうです。
範囲:6万人~50万人
予想:12万人~24万人
まとめると上のような推計となります。
■人口から推計
今度は別のアプローチから推計をしてみます。
統計局のデータによると、10歳以上の日本人は約1億1620万人です。(最新のデータではないですが誤差の範囲)
このうちの500人に1人(0.2%)が短歌をつくると仮定すると、約23万人が短歌人口であると推計できます。
500人に1人という比率を別の言い方で表すと、東大の学部生(1万4000人)のなかで28人、早稲田の学部生(4万4000人)のなかで88人が短歌をやっている計算です。
この比率(以下、短歌人率)の仮定が推計精度の要なんですが、比率が1%を切るとさすがに常識の突きあわせも難しくて、このあたりの短歌人率の仮定にはかなりのブレが出てきてしまいます。
ということで、「100人に1人」(1%)~「1000人に1人」(0.1%)と幅を持たせて、それぞれのパターンでの短歌人口を推計した表を以下に貼ります。
まとめると以下の通りです。
範囲:12万人~116万人
予想:12万人~39万人
■年代別の特性を考慮して推計
2つのアプローチによる推計を紹介しましたが、どちらも年代別の違いを考慮していません。
しかし実際には、人口分布は年代によって倍近く違いますし、年代によって活動する文芸創作の傾向は変わるはずです。
さらに、日本の人口分布と文芸創作人口分布は、年代別に見たときに、その特性がかなり異なります。
統計局のデータを元に作成
「平成23年生活基本調査」のデータを元に作成
推計結果へのインパクトは限定的だと思いますが、この違いを無視するのはさすがに少し乱暴かもしれません。
そこで、1つめのアプローチに年代別シェアという考えを組みあわせて推計してみたのが次の表です。
結果として、短歌人口は16.5万人となりました。
ここでは「年代が上がるほど短歌シェアが上がる」というモデルを仮定しています。
文芸創作人口の分布を考慮に入れるならば、このようなモデルが妥当かどうかは議論の余地がありそうです。
しかし、短歌について言えば、むしろ文芸創作人口分布に相似すると考えるほうが無理があると考えました。
いずれにせよ、それぞれのシェアの値は感覚的なものです。
ちなみにシェアの仮定は比較的保守的な数値だと思っているので、全年代この倍くらいの数値になる可能性はありそうです。
その場合の短歌人口は33万人になります。
予想:16.5万人~33万人
また上の表をヒストグラムにしたものを下に貼ります。(尚、75歳以上は階級の範囲が揃っていないために除外しています)
「平成23年生活基本調査」のデータを元に作成
■短歌人口の推計のまとめ
以上3つの推計における短歌人口の予想範囲を以下にまとめます。
生活基本調査: 12万人~24万人
人口: 12万人~39万人
年代別シェア: 16.5万人~33万人
比較的似通った予想範囲となりました。ただし、これは最終的に僕が妥当な範囲を恣意的に決めているからという理由もあります。
また、この推計値についての注意事項を箇条書きにしておきます。
- この短歌人口はあくまでも「推計」です
- データ補足を多くの仮定で補っているので精度はそれなりです
- 具体的にはそれぞれの予想範囲で±50%くらいの誤差があると思ってください
■最後に
最後になりますが、「短歌人口」という最も基本的で重要なデータが、探しても見つからない(おそらくちゃんとした調査結果が存在しない)というのは、業界としての大きな問題だと思います。
短歌協会的な組織はいくつかあるようですが、こういった取り組みをまだしていないのであれば、是非とも調査していただいて、より精度の高いデータを公表して欲しいと思います。
そのような基礎的なデータがあってはじめて、短歌界全体の活性化につながる有効な施策が打てるのではないでしょうか。
ではでは。
■主な参考資料
平成23年生活基本調査(総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2011/index.htm
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