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2012年3月25日 - 2012年3月31日の6件の記事

2012年3月30日 (金)

【短考】「ポテンシャル×完成度」の2軸で作品の推敲方針を決める

今回のテーマは「推敲」

時々「推敲が必要なのか?」という意見を聞くことがあります。
「そりゃそうだろ!」って感じですが、悩ましいポイントがあるのも事実。

ということで今回は、
推敲についての大雑把な指針を与えることを目的として記事を書きました。


■推敲は必要なのか

結論として「推敲はしないよりした方が絶対にいい」です。

そもそも推敲は「作品を良くするために行う修正」なので、
「作品を良くしたい」のであれば議論の余地はないですよね。

結果として作品が良くならないこともありますが、
その場合はその中でベストなものを残せばいいだけの話です。

ただし、(1)どれを推敲するか(2)どこまで推敲するか、については注意が必要です。

またこの点が初心者が失敗を犯しがちなポイントだと思っています。

そこでこの記事では「ポテンシャル×完成度」の2軸で整理した
「推敲戦略マトリクス」という大げさな名前のツールを用いてこの点を説明します。


■推敲戦略マトリクスとは

横軸に「ポテンシャル」、縦軸に「完成度」をとった2×2のマトリクスです。
各象限ごとに推敲の基本的な戦略・指針を示しています

Suikou_strategy

【軸の説明】
ポテンシャル:良い作品になりそうかどうか
完成度:作品の完成度合い、推敲の余地がどれだけあるか



■どれを推敲するか

まず理解する必要があるのは、
「どれだけ磨いても石ころはダイヤモンドにならない」という事実です。
また、推敲の余地がないものも推敲する意味がありません

従って、推敲する対象は、
磨けばダイヤモンドになる第4象限の「ダイヤの原石」ということになります。
「ダイヤの原石」は合格水準に達するまで推敲をつづけることが基本方針です。

第3象限の「石ころ」思いきって捨てましょう
その労力を「ダイヤの原石」を磨くこと、
ないし新たなダイヤの原石を発掘すること費やすべきです。

第1象限の「磨かれた石」はそのまま発表してもOKです。
ただし、所詮は石なので大した価値(=評価)は望めません。※

※もっとも価値観は人それぞれなので自分にとっては石ころでも他の人には宝石だということもあり得る

それよりは磨き上げた作品のなかの
何かしら光る部分(フレーズや発想)を次の作品に転用するのがオススメ。

また「磨かれた石」で注意するべきなのは、
「一見キレイにまとまっているだけに、そのつまらなさに無自覚になりやすい」
ということです。

よく見る光景だけに、これは強調しておきたいですね。

第2象限の「ダイヤモンド」は完成作品なので推敲は不要です。
推敲の次のステップとして、効果的な発表方法などを考えることになります。


■どこまで推敲するか

「合格水準に達していると確信できるまで」が判断基準。
ちょっとでも迷いや違和感があるなら推敲を続けるべきです。
「費やした時間や労力」は判断基準になりません。

この考えからすると、
安定的に良い作品を発表している人は、
合格水準が高く、合格水準の判定が厳しく、合格水準の判定が適切な人だと言えます。

逆に発表作品の出来にバラツキがある人は、
合格水準が低い、ないし、曖昧で、合格水準の判定も甘く、合格水準の判定精度も低い人ですね。

そうは言っても、
「鑑賞眼」「自作を客観視する能力」が要求されてくる話であり、
やれと言われてやれることではないです。

また、どうやって鍛えればいいのかという問題もありますが、
まずはこういったマインドセットを持つことが重要だと思います。

マインドセットを持つだけなら誰でもすぐできますからね。


■推敲前にポテンシャルの高い作品を見極めることをできるのか?

これまでの説明を読んでいると、
当然このような疑問が生まれると思います。

結論をいうと、ケースバイケースですね。
推敲してみないとわからないこともあります。

要するに「ダイヤモンドの原石」を磨いているつもりが
実は「石ころ」で、結果的に「磨かれた石」ができたというケースですね。

Route_to_failure

不幸なケースではありますが、
その場合は先に説明した「磨かれた石」の推敲方針で作品を取り扱えばOKです。

もっとも、推敲しないとわからないケースは稀で、
だいたいの場合は、推敲前に見極められるというのが個人的な意見です。

この意見について、経験者には感覚的に同意してもらえると思いますが、
それを判断可能にしているメカニズムについては今のところノーアイデア。

今後考えてみたいテーマです。


■この記事で扱っていない重要なこと

以下についてはこの記事で扱っていません。

1.そもそも良い短歌とは?
2.推敲の具体的な方法は?
3.ダイヤの原石を発掘する方法は?
4.鑑賞眼を鍛える方法は?

これらはいずれも推敲するためには重要なことです。
いずれ別記事で考えを述べてみます。


■まとめ

最後に今回の記事を簡単にまとめておきます。

1.作品を良くしたいなら推敲すべき
2.なんでもかんでも推敲すればいいわけではない
3.何をどこまで推敲するかは「ポテンシャル×完成度」で整理すると良い
4.「推敲戦略マトリクス」を使って推敲の基本方針を考える「たたき台」にする
5.作品の質を高位安定させるには「鑑賞眼」と「合格水準についてのマインドセット」が不可欠
6.鑑賞眼はともかくマインドセットはすぐ持てるのでまずは意識改革からはじめよう

この記事が傑作短歌を生み出す一助になれば嬉しいです。



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2012年3月28日 (水)

おんじ(連作3首)

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おじいさん教えて 彼女が好きなのにぼくのクララがもうたちません


一晩に二回も? 愛は無限でも愛することには限界がある


おじいさん あのねアルムのもみの木に聞いてみたから帰っていいよ





# 佐々木あららさんの 連作『クララ』(2006) リスクペクトということで。



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2012年3月27日 (火)

愛にまつわるメモワール(連作3首)

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愛をくれなんて言うけどあげたって受け取ってくれなさそうな人


愛をくれ できれば受けとる時期および相手も俺に選ばせてくれ


愛されていないと感じるのは愛を感じる側の問題かもよ



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2012年3月26日 (月)

「うたらば総集編Ⅰ」掲載作品の感想

前回の記事で予告したとおり「うたらば総集編Ⅰ」の
掲載作品のなかで気に入った作品を紹介します。


*


春に恋するのが一番良いでしょう風が強いと尚良いでしょう (伊藤夏人)

恋するタイミングに関する極論の謎の説得力。

「春に恋」はまあ確かにって感じですけど、
「風が強いと尚良い」理由はよくよく考えると謎すぎる。

この謎の説得力を生み出しているのは気象予報士のような語り口なんだろうか。

恋に前向きになれそうなさわやかな作品ですね。


まって、って言葉も届かないくらいあなたとあたしのあいだにさくら (こゆり)

情景が目に浮かぶドラマティックな名作。
まあでもこれ相当なさくらですよ。

しかし解説不要な名作すぎて解説することないな。


好きな人はいないと首ふる十歳の髪にふれればうまれる光 (イマイ)

本当は好きな子がいるんでしょ? んー?(にやにや)

そんな「うざ絡み」をしたくなる作品。
きれいな作品ですね。そしてかなりのキューティクルです。


走ってる 尖った空気吸い込めば わたしの肺がこのへんにある (とびやま)

連作「肺呼吸」より一首。

なんとなく冬のマラソン大会を思い出しました。
「肺がこのへんにある」という独特の身体感覚表現もおもしろいなあ。

言われてみれば納得できるけど、
そういうふうには普通なかなか考えないですもんね。

ぜひ連作全体を読んでもらいたいです。


終わりなど告げずに沈む曇天の太陽みたいなやさしさだった (野比益多)

作品自体の完成度が高いし、着眼点もおもしろいです。
確かに「曇天の太陽」ってやさしいかも。

逆に、真夏の晴天の夕陽って
満面のどや顔で手をぶんぶん振りながら沈んでいく印象があります。

しかし野比さんは陰日向に咲くものにやさしさを見出しがち歌人ですね・・・・・・。
そんな野比さんが自身がやさしい人(orそうありたい人)なのでしょう。



どこまでもあなたの影はまっすぐで そういうところが大好きだった (龍翔)

ふつう影ってまっすぐですやん・・・・・・?
少なくとも個人差ってないですやん・・・・・・?
という常識的な突っ込みを寄せ付けない説得力。

まあ影を暗喩として自然に受け取れるからかも。

龍翔さんは印象的なフレーズをつくるのがうまい、というか活かし方がうまいですね。



魚には魚の呼吸 くちびるを強く結んで行く春のなか
 (むしたけ)

連作「はるのさかな」より一首。

なんかこの「世界に違和感を覚えながらも強くあろうとする感じ」がぐっとくるんだよな・・・・・・。

重苦しくてうざくなりがちなテーマだと思うんですけど、
「春のなか」というさわやかなフレーズがバランスを取っている印象。

こちらも連作自体がすばらしいので、
ぜひぜんぶを読んで欲しいですね。



バスの窓駆け上がる雪 ねえ、あのさ サビしか知らないあれ歌ってよ (とびやま)

あいまいか。

無茶振りをされた相手の困り顔が目に浮かびます・・・・・・。

逆にいうとそんな無茶振りをするくらい退屈な空気感と
無茶振りできるくらいの親密さも伝わってくる。

それはそうと雨粒だけではなく雪もバスの窓を駆け上がるんですね。



春を待つ方法としてわたしなら真っ白になる覚悟はあるよ (ミボツダマ)

まっすぐな姿勢がすがすがしいです。

作品としても、ひねりがあって、
だけれど、一読するとそんなことを感じさせないシンプルなつくりになっていてすばらしい。

ミボツダマさんには「真っ白になる覚悟」だけでなく、
「真っ黒になる覚悟(=目的のためには誰かを傷つける覚悟)」を織り交ぜていただき
ぜひとも春をゲットして欲しいものです。



雪だるまさん そばにいて欲しいけど同じ世界じゃ溶けてしまうの (ショージサキ)

かわいいなおい!

歌っている内容はまあよくある感じだし、
「お前が厚着して外出ろや」という冷静な突っ込みもできなくないですけど、
このキュートな歌いっぷりの前では無意味。

ご本人的には過去の赤面短歌らしいけど、
個人的には今回紹介した作品のなかでも1、2を争うくらい好きな作品です。


*


いかがでしたでしょうか?
気に入った方はぜひ「うたらば総集編Ⅰ」をゲットしてみてください。

ではまた。



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2012年3月25日 (日)

【短考】「うたらばの集い」イベントレポート(つづき)

先ほどは唐突に記事を終わらせてすみませんでした。
考えが足りませんでした。

言いわけは見苦しいのであれこれ書きたくはないのですが、
まあなんというか途中で飽きたんですなあ・・・・・・。

というわけでつづきです。



■ミニコンテストのなかで好きな作品

前の記事では、
好きな作品について書く直前で終わったんですけど、
現在投票を受付中らしいので作品紹介は保留しておきます。

コンテストの結果発表が終わり、
記名つきで感想を書けるようになったら別記事で紹介します。



■「うたらば総集編Ⅰ」の感想

イベントでは、
これまで5回刊行されたフリーペーパーのうち
最初の3冊(vol.00~vol.02)に掲載された作品を
再編集して一冊にまとめた「フリーじゃないブック」である
「うたらば総集編Ⅰ」が販売されていました。

約80Pオールフルカラーという豪華本!

本のサイズは、正式な表現の仕方がよくわからないので
短歌サイトらしく比喩でお届けすると、

朝起きてiPhoneで時刻を確かめようとしてこの本を手に取ったら、
「なんか今朝のiPhoneでかくね? 朝勃ち?」という違和感を覚えるくらいの大きさ

です。

これも発行者である田中ましろさんの先行投資なので、
売れないと田中家危機一髪なんだと思います。

応援しないわけにはいかないですね!

いやでも、まじめな話、
文学フリマに出されている短歌本の多くより遥かにクオリティが高いですし(私見)、
今後いろいろなチャネルで販売展開をするらしいので、
興味がある方はぜひお買い求めを。

ちなみにお値段ですが、現地販売では500円でした。
(今後の販売価格は不明です)

個々の短歌作品についても、ぐっときた作品がいくつもあります。
それらについては別記事で感想を書きますね。



■その他の感想

その他の感想を箇条書きで。

  1. フリーペーパーの刊行、イベントの開催、そして本の販売という一連のアクションを起こしているということ自体がすばらしい
  2. 短歌みたいな小さいうえにクローズドな世界でこういうアクションを起こしている人は貴重だし、今後も応援していきたいです。
  3. こういう試みがもっと増えれば、いろいろ変わっていきそうだ。
  4. 今回のイベントに集まった人たちは、現代口語短歌で、歌暦も浅く、若い人たちが多かったんだけど、その中でも「××系短歌」みたいなカテゴライズで更に世界を狭くしている感じも一部あって、なんかもったいないなあとも思った。
  5. そういう状況だからこそ、こういうイベントだったり、本多響乃さん(@mymhnd)の存在がとてもありがたいです。狭い世界同士をブリッジするきっかけを与えてくれているので。
  6. 名刺は大事。つくろう。

とまあ最後は取りとめのない感じになりましたが、
ひさしぶりに短歌について色々と考えるきっかけにもなったし、
イベントに参加して良かったです。


イベントの主催・手伝いをされたみなさん、
どうもありがとうございました!

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【短考】「うたらばの集い」イベントレポート

こんにちは。

うさみみつけたことありますか?
僕はあります。

そういうわけで(どういうわけだ)
2012年3月25日(日)に東京で開催された
「うたらばの集い」というイベントに参加してきました。

色々と考えさせられたこともあり、

1.イベントレポートという体の感想
2.「うたらば総集編Ⅰ」の感想

について書きます。


■「うたらば」とは

うたらばとは田中ましろさん(@tnkmsr)が不定期発行している、
「短歌×写真のフリーペーパー」のことです。

http://www.utalover.com/


これは嘘ですし、嘘にしてもいろいろ雑ですが、
「うたらば」の語源は平安時代の女流歌人うたらばのほにゃららから来ています。

特徴は毎回テーマを掲げて
掲載作品をフリーエントリーの投稿作品から選んでいるところですね。

ちなみにこのフリーペーパーは
田中ましろさんが私財を投げ打って
家庭も顧みず発行しているそうです。

応援せずにはいられませんね!


■「うたらばの集い」とは


http://www.utalover.com/akichi2012/index.html

・・・・これだけだと余りにも雑なので簡単に引用すると、

☆事前に募集した短歌の展示とミニコンテスト
☆うたらば総集編最新刊の販売
☆その他、短歌関連作品の展示

の3つが主なコンテンツのイベントでした。
(そうだったのか・・・・・・)


■ミニコンテストのなかで好きな作品


そんなコンテンツのひとつである
ミニコンテスト出詠作品80首のなかで特に気に入った作品は次の三首です。

ちなみにテーマは「集」。



(つづく)


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